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小冊子のこと

 学藝員の田中です。今回はサイトウミュージアムで発行している展覧会図録(小冊子)について少しお話させていただきたいと思います。

 展覧会図録は、とっても重要なものです。かつては「展覧会が終了したら残るのは図録だけだ」と言われたぐらいに記録性が高く、そのため調査や研究成果の集大成といえる立派なものまであります。美術館は心のオアシスですが、一方で画家の創造の源泉などを調査し、再評価するための研究機関でもありますので、その点を重視すれば自ずと冊子が充実していきます。

 ただ、近年の冊子は目的によっていろんな形態、方向に分かれてきています。ここではその説明はしませんが、サイトウミュージアムでは、来館された方全員にお配りする鑑賞用の解説冊子として図録を発行しています。その理由はいくつかありますが、1・限られた展示スペースに、なるべく多くの作品をご覧いただきたいので、年譜などを冊子に収録してパネルのスペースを省くため、2・展示替えが多いのでご来館いただいた際に展示していない作品を知っていただくため、3・お帰りになったあとにパラパラと冊子を開いて思い出していただきたいため、という願いが含まれております。「より詳しい研究成果などがあれば、ホームページや他の媒体でご紹介するというスタンスでいいや」と最初に決めたのですが、案の定、詳しい研究成果は滞ったままです。

 さて、この小冊子ですが、判型が横182㎜✕縦225㎜、本文32ページに表紙がついて中綴じになっています。展覧会ごとに判型が変わるよりも、なるべく同じであったほうが本棚に入れたときにすっきりと収まりますので、1ページに3点程度の作品画像と解説を入れ、油絵や掛軸などにも対応できる比率とは?と悩んだ結果、開いたら1:1.618の、いわゆる黄金比に近くなりました。中身の内容はさておき、表紙がきれいとおっしゃってくださる方が何人かいらっしゃいますが、オーロラコート四六判180㎏の紙に特色を使っています。「もうひとつの日本画展」の表紙はDICカラーガイドの284sを指定しました。本文の紙は、油絵でも日本画でもおおよそ対応できてしかも厚みの割には重量が軽いb7トラネクスト100.0g/㎡で、普通のCMYK4色刷りです。どの展覧会も入館料大人500円、高校・大学生300円で、それよりも冊子作成コストを抑える必要があるのですが、そこは撮影から版下まで全部自前でまかなっているという涙ぐましい努力があります。ようやく特殊な機械がなくてもノートパソコンで版下づくりまでができる時代となりましたが、そこに時間を費やすと、肝心の内容そのものや文字の誤りなどの点検がおろそかになりますので、美術館や博物館の方は真似されないほうが良いです。



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