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サイトウミュージアムのデータベース構築と作品メンテナンスの作業マニュアルについて 3

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3.作業の開始

 少し前にも簡単に触れましたが、もう少し詳しく記述しますと、

3-1. 作品の画面を上にしてテーブルに置く。​

  • 1人で運ぶのが少しでも不安であれば、必ず複数人でします。テーブルに置けない大きさであれば床を養生して床上で作業します。

3-2. 額縁のガラス(アクリル)とデコレーション部分をクリーニングする。

  • 掃除機の吸い込み口が額縁に当たらないよう注意しながら、刷毛でホコリを掻きだします。

  • 額縁のガラスやアクリルを拭きます。アクリルは傷つきやすいので、ティッシュを十分にアルカリイオン水等で湿らせ撫でるように拭きます。低反射アクリルや低反射ガラスの場合は塗膜が取れるおそれがありますので、必要最小限のクリーニングとし、今後も指などで汚れないよう取り扱いに気をつけます。​

3-3.額縁を裏向けます(作品の画面を下にします)。​​​

  • 額縁に裏板(裏蓋)がある場合は、裏板のシールや文字をデータベースに入力します(fig.5)。あわせて裏面すべてのデータを入力します。→註1.「データベースの構築」へ

  • 3-2と同様に額縁裏面をクリーニングします。

  • 裏板(裏蓋)を外します。基本的に額縁の金具や紐は消耗品ですから、錆が生じていたり汚れていたりした場合は取り替えます。まだ使用できる場合は、釘やネジなどを元の位置に同じ角度で戻すために、外した釘やネジはわかりやすいように保管します(fig.6)。釘を戻す場合は、金槌で叩いて戻すとその振動で作品にダメージを与えるのでラジオペンチなどで押し込んで戻しますが、どうしても固定が緩くなってしまうようであれば、釘はネジに交換したほうが良いかもしれません。裏板(裏蓋)を外したら、作品の裏面も軽く刷毛と掃除機でクリーニングをし、作品裏面の文字やラベルなどのデータを採取しデータベースに登録します。裏面も撮影しますので、あまり重要な情報でないもの(すでにわかっている画廊のラベルの作者名、作品名の記述など)は省略します。

  • 作品を取り出して、ガラスやアクリル板をクリーニングします。

3-4. 作品と向き合う。

  • 素材・技法の確認、作品の採寸、額縁の採寸、サインや款記の記録のあとは、作品の大まかな損傷状態を点検し「傷み具合」に記述します。その方法は、画面の波打ちや破れなど構造的な損傷→汚れ→亀裂→剥落→付着など、大きなところから捉えて細部へと向かう感じでだいたい記述しています。別に状態調査記録票がある場合は簡易な記述で済ませます。データベース上の記述は、展示の際に何か作品や額縁などの手当てが必要かどうかを文字で確認することが主な目的となっています。そのため、「傷み具合ランク」が重要で、「C」以下のものが出品予定のものにないかどうかを瞬時に確認できるようになります。

  • この観察の際に「キャンヴァス側面にまで絵柄が続いている(fig.7)」「釘が最低でも2回打ち直した跡がある」などが判明した場合は「備考」に入れます。

  • ​「作品解説」は、作品を額縁から取り出して間近に観察する絶好の機会ですので、図版を見ながら解説を書くよりも捗るはずです。その際の感想や発見をメモ程度にまとめますが、最終的にはその解説文を公開利用することを念頭に置き、あとで文献などで補強しやすい文にしておきます。

  • ここまでデータが取れましたら、撮影へとつづきますが、また次回。

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fig.5 額縁の裏面にある様々なラベル

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fig.6 抜いた釘を並べる

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fig.7 キャンヴァス側面まで続いた絵柄

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