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1_0617_1_佐分真《南佛風景(B)》.JPG

01 佐分真        1898-1936    南佛風景(B)    1930(昭和5)年頃        油彩・キャンヴァス  45.0×52.8cm
  SABURI Makoto              Southern France

画面の両端側面の途中まで絵柄が続いており、上下はそれ殆ど続いていないことから、フランスで購入したキャンヴァスを日本の額縁に収める際に小さく張り直したと考えられる。よって帰国後ではなく、現地での制作によるのであろう。制作年は1927年から32年までのいずれかということになるが、他の佐分作品などと比べてみて、仮に1930年頃とした。木の葉の表現はコローのような柔らかい筆触でかすらせるように描かれ、石垣や家の付近のペインティングナイフを併用した大まかな把握はヴラマンク、そして手前の地面はセザンヌの影響を見てとれるが、全体としては統一が取れている。

05 藤島武二        1867-1943     日の出(海)    1933(昭和8)年頃        油彩・キャンヴァス 33.3×45.5cm
  FUJISHIMA Takeji                   Sunrise (Sea)

藤島は1928年に学問所に飾る絵画の制作依頼を受けてから、日の出を求めて全国を旅した。最終的には内蒙古の日の出を提出したが、それまでに《大王岬に打ち寄せる怒涛》(1932年)など数々の作品が誕生した。本作は、神戸港や屋島など瀬戸内を描いた作品に傾向は似ているものの、舟の形態などから台湾に赴いた際(1933年10月)に淡水港あたりで描いた作品である可能性もある。空などには絵具の指触乾燥後に不透明色を塗り重ねる「スカンブリング」の技法が用いられていたり、乾く前にキャンヴァス上で他の絵具と混色をさせたり、筆に絵具を不均一に含ませて帆船の輪郭を表したりと、熟練の技が光る作品である。朝陽の複雑な色味がこれ以上ないといえるほど絶妙に再現されている。

10 伊東深水        1898-1972    婦人        制作年不詳        絹本着色        41.6×50.3cm
ITŌ Shinsui                Woman

シロバナハギと薄が見える庭に婦人が柱に少し持たれている。和服は流水に紅葉柄、帯には菊といった具合に秋の草花がさまざまなところに描かれている。物思いに耽る婦人の妖艶な面持ちと、秋の草花の競演となっており、人恋しさなのか、誰かを待っているのか、さまざまな想像が可能である。着物の透明感を出すために、紅葉や流水の柄を二重に描いているところなど細部にまで工夫が見られる。

30 久野  真        1921-1998    鋼鉄による作品 #297        1975(昭和50)年        ステンレス、板        160×130×6.5cm
KUNO Shin               Work of Steel, No.297

長方形の画面に斜めに走る3本の流れが眼に入る。そのうちの1本は均質な細い直線。残りの2本は交差しつつ上部に向かうに従って広くなっている。ステンレスを加工したこのレリーフ(浮き彫り)は、金属独特の硬質感を湛(たた)えていながらやわらかさや温かさを備えている。
久野真はステンレスの他にも鉄や鉛などの金属による「絵画」を追求した画家として知られている。本作も絵画的なパースペクティブ(遠近法)や山水画に見られる「
描かれない無の空間」が意識されているなど探求の跡が確認されよう。

28 伊藤久三郎        1906-1977   無題        1973(昭和48)年      油彩・キャンヴァス        60.7×50.0cm
ITŌ Kyūzaburō                 Untitled

何か具体的な対象物を元に抽象化されたのかどうか想像がつかない形をしており、模様のような平面性が全体を覆っている。中央に分布する磨かれた鉱物のような茶色い楕円は、球面を呈しているように見える。隠し味として下地に赤色などを忍ばせたり、繊細な線描や塗りで構成されていたりするため、絵画から放たれる生命力のようなものを強く感じさせる。
京都出身の伊藤久三郎は戦前から抽象作品を発表していた画家で、本作はシュルレアリスムの系譜に沿いながら独自のユーモアをたたえている。具象絵画にも見るべき作品がある。

37 駒井哲郎        1920-1976   海底の祭        1951(昭和26)年      メゾチント、ソフトグランドエッチング・紙       23.8×17.1cm
KOMAI Tetsurō                Undersea Festival

海庭はどのような世界が広がっているのか。現代であれば深海探査艇などが様々な映像を伝えてくれるが、それでも謎は尽きない。東洋では龍神(龍王)が住むとされる竜宮城伝説があり、日本では時空間が変質する浦島太郎の物語が有名である。
芸術家にとっても未知の空間は、想像力をかき立てる魅力ある素材であり、駒井哲郎はソフトグランドエッチングという技法を使って葉や布をコラージュして表現した。想像上の建物や海底に住むであろう生物と、生活の身近な存在である葉や布。幻想と現実とを交流させることにより、駒井は当たり前に存在すると思われる世界すべてを問い直しているかのようだ。
駒井は慶應義塾普通部在学中に、三重県出身の西田武雄(半峰)の主催する日本エッチング協会に通い、50歳を過ぎてからは母校である東京藝術大学で教鞭をとった。

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