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味わう静物画

2023年11月3日(金)-2024年2月25日(日)

■概要・成果
西洋において静物画は、風景画とほぼ同時期の16世紀の末頃に絵画の重要なジャンルのひとつとなりました。大航海時代によるヨーロッパ世界の拡張と市民階級の台頭などがこうしたジャンルの需要を喚起したとされています。日本では花鳥画などは古くから描かれていましたが、それらは吉祥の意味などが込められていたため、ヨーロッパのような狩猟の成果としての吊り下げられたウサギやキジなどが描かれることはありませんでした。江戸時代の後半になると、小田野直武らが西洋の写実表現を取り入れた秋田蘭画などに静物画が登場しますが、本格的に描かれたのは明治時代に入ってからのことで、歴史としてはそれほど長くはありません。
2022年5月に開館したサイトウミュージアムは、近現代の日本人画家の絵画作品を主なコレクションとしています。それゆえに、西洋美術に触発され近代以降多く描かれてきた静物画についても積極的に収集してまいりましたが、本展によって、ようやくまとめてご紹介する機会を得ることができました。
「ものを見つめる」と題した第一章の展示では、題材に投影される光と影を追い、題材どうしの前後の位置や材質などを注意深く観察することで、立体的な表現が画面に浮かび上がる、その喜びが感じられる作品をご紹介。第二章では描かれた果物や花などの視覚では捉えられない生命感や香りや味などをも画面から感じさせようとする試みを行った作家の作品、そして第三章では描かれる対象物を通して自己を表現したり、キュビスム的な手法を応用するなど絵画の新たな可能性を模索した作品を選定しました。
身近なジャンルの展覧会であったことや、松阪カルチャーストリートが会期中に開催されたこともあり、これまでの展覧会よりも親子連れや20歳代の入場の割合が高い傾向にありました。少しずつですが美術に親しむことを日常のリズムに取り入れる地域の方も増えてきたのではないかと推察されます。

■会期中のイベント

◎学藝員によるミュージアム・トーク
2023年11月5日 (日)
2024年1月6日 (土)
いずれも午後2時から約30分

​◎学藝員による絵画のお話スライド・トーク
2023年12月3日 (日) ⑤おいしい静物 
2024年2月3日 (土) ⑥危なっかしい静物
いずれも午後2時から約40分

■関連記事等
1.新聞
・「日本の静物画、独自の発展をたどる 松阪で企画展」中日新聞(三重版) 2023年12月8日
・「『味わう静物画』展、後期始まる 三重・松阪のサイトウミュージアム」夕刊三重 2024年1月15日
・(中日新聞)2023年11月7日 田中善明「中谷泰『栗』まちなかで絵と遊ぶ64」
・(中日新聞)11月21日 田中善明「柳敬助『静物』(まちなかで絵と遊ぶ65)」
・(中日新聞)11月28日 田中善明「伊藤快彦『たけのこ』(まちなかで絵と遊ぶ66)」
・(中日新聞)12月5日 田中善明「井手誠一『豆腐』(まちなかで絵と遊ぶ67)」
・(中日新聞)12月12日 田中善明「正宗得三郎『柿』(まちなかで絵と遊ぶ68)」
・(中日新聞)12月19日 田中善明「児島善三郎『薔薇』(まちなかで絵と遊ぶ69)」
・(中日新聞)12月26日 田中善明「平賀亀祐『鮭』(まちなかで絵と遊ぶ70)」
・(中日新聞)2024年1月16日 田中善明「椿貞雄『ガラス鉢の椿』(まちなかで絵と遊ぶ71)」
・(中日新聞)1月23日 田中善明「有馬さとえ『瓶花』(まちなかで絵と遊ぶ72)」
・(中日新聞)1月30日 田中善明「山口薫『花』(まちなかで絵と遊ぶ73)」
・(中日新聞)2月6日 田中善明「中村研一『花瓶花』(まちなかで絵と遊ぶ74)」
・(中日新聞)2月20日 田中善明「川口軌外『静物マスク』(まちなかで絵と遊ぶ75)」
・(夕刊三重)12月2日 田中善明「美術は何の役に立つの?(学芸員による絵画のはなし30)」
・(夕刊三重)2024年1月6日 田中善明「静物画について(学芸員による絵画のはなし31)」
・(夕刊三重)2月3日 田中善明「個性について(学芸員による絵画のはなし32)」
2.雑誌等
・「秋から冬にかけてのこの時期に味わいたい作品たち 花や果物、魚や器などが描かれた『味わう静物画』展」『月刊しんぷる』No.515 2024年1月号 p.31

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