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資料交換のありがたさ


学藝員の田中です。専門は近代洋画史と油画修復ですが、たいていの学藝員は自分の専門外の担当を持つことがあります。サイトウミュージアムで次回開催予定の近代の南画と花鳥画の展覧会、今が冊子づくりのピークでありながら、知識のベースが僕は十分でないのでとても苦戦しています。

そんなとき、昨日、田辺市立美術館から『近世文人書画コレクション』が年報と共に送られてきました。苦戦しているのが伝わったのかのように、何ともありがたい一冊です。

美術館や博物館はそれぞれの刊行物を年度末などにまとめて他館に送り、交換し合っていて、それぞれが研究した業績をこうして共有することで、皆が次のステージにすすめるわけですね。

田辺市立美術館といえば、今話題の佐伯祐三晩年の名作《リュクサンブール公園》や《扉》があることで知られていますが、近世文人画も充実しています。その核となるのが田辺市出身の実業家・脇村禮次郎氏の収集作品で、ご遺族がそれらを寄託されるとともに、美術館の建設費や運営費を寄付されています。実兄で経済学者の脇村義太郎氏も佐伯祐三作品などをこの美術館に寄贈されました。なんともうらやましい限りですが、こうした経営者は、美術品を富の蓄積ではなく、経営感覚を、美術にみられる調和や破綻や創造から読み取っていたのかもしれません。

この『近世文人書画コレクション』にはそれぞれの画中に書かれた漢詩や署名(落款)や印章の文字もしっかりと翻刻されていて、やさしい解説まで付いています。近世や近代美術史を専門にされている方でも、すべてを一人で翻刻することはむずかしく、本図録からもこの美術館には強力な専門家のネットワークがあるのだな、ということが推測できます。

梅の花が咲き誇る場所でもありますので、暖かくなればゆっくりと訪れてみたい美術館です。


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