次回の展覧会のカタログ作りも佳境に入り、締め切りがすぐそこまで来ていますがまだエッセイが書けていません。印刷会社の担当者がまだかと不機嫌になっていらっしゃらないか気になるところですが、そんなときにこそこのコラムが書きたくなってしまいます。
今回は、サイトウミュージアムから歩いて3分ほどのところにある米麹のお店を紹介します。こちらは、江戸時代から続く麹屋で、建物が2021年国の登録有形文化財に指定されただけあり、つい中を覗き込んでしまいたくなりますが、ほとんどの日は店番の方の姿が見えません。それというのも、米麹は月に1度ぐらいのペースでまとめて出来上がるので、常時売られているわけではないからなのですね。しかも、夏場は麹づくりに適していなくて、12月頃も発酵がゆっくりなので納得のいく状態になるのは麹だけが知っています。というわけで、予約しておいて出来上がると電話で教えてくださるシステムになっています。
さて、僕も恐る恐る店に入って大きな声でお店の方を呼び出して予約をしましたが、一度こちらの米麹を使ってみると、もう発酵の世界にどっぷり。昨年、東海圏内で一番心に残った展覧会を聞かれたとしますと、名古屋大学博物館の「世界の発酵食をフィールドワークする」(2022年3月22日-9月24日)だったりします。米麹の入った白い紙袋を開けると、麹菌がふわっと舞い上がって幸せを感じます。味噌や醤油にお酒にチーズ、人間は発酵に支えられているということを改めてこのお店で教えていただきました。現在は常備食として米麹の漬物各種と、調味料として塩麹、ジャガイモ麹(左端)、にんにく麹(中央)、玉ねぎ麹(右端)を自己流の塩の分量で作っていて、家族からは「漬け太郎」と呼ばれるところまでなんとか出世できました(?)。
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